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2024.04.12

#経費DOWN

エレベーターメンテナンス会社が提案するリニューアル工事、正しい評価方法とは?

エレベーターメンテナンス会社が提案するリニューアル工事、正しい評価方法とは?

 築年数が経過した建物では、エレベーターメンテナンス会社からリニューアル工事の提案を頻繁に受けることから、オーナーさまからの多くのリニューアル工事に関するご相談をいただきます。

複数のメンテナンス会社との取引実績がある当社では、各社の提案を目にしてきた経験から、その提案がオーナーさまに適切であるかどうかを見定めるノウハウがあります。その甲斐あってか、当社管理物件でも毎年数件でリニューアル工事実施をサポートさせていただいております。

エレベーターリニューアル工事には多額の資金が必要です。そのため判断を間違えてしまうと不動産経営に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
今回は、築33年、6階建てのマンションに設置されたエレベーター1機を例に、リニューアル工事提案の判断の基準から、比較検討を経て工事発注の決定までをみていきます。

課題

  • 突然提案される高額リニューアル工事
  • リニューアル工事の検討すべきポイント
  • 見落とされがちな、その後のメンテナンス契約

解決

  • リニューアル工事が必要な理由と時期の把握を
  • 「工事内容」「金額」「工期」を抑える
  • メンテナンス契約の見直しも必須項目
  • エリア

    大阪市城東区

  • 物件種別

    一棟マンション

  • タイプ

    ワンルーム・ファミリー混在

  • 戸数

    31戸

  • 構造

    鉄骨造

突然のリニューアル提案

 新築時からメンテナンス契約を続け、必要に応じて修繕を行い、大きな故障もなく順調に稼働してきましたが、ある日急にメンテナンス会社から「リニューアル工事の検討をお願いします」という工事提案書と1,300万円もの見積もりが突然オーナーさまに届きました。


なんの前触れもなく提出されてきた高額な見積書に驚かれたオーナーさまから「一緒に検討してほしい」との相談がはいります。さっそく、届いた提案書と見積書を見せていただくと、確かに1300万円の見積もりと工事内容、そしてそれに必要な提案書が添付されています。

 まずは、現場の把握からスタートです。


メンテナンス会社に連絡をいれ、エレベーターの現況、リニューアル工事が必要である理由、そしてその提案工事内容のヒアリングを実施します。

今回の提案理由

☑「2027年をもってメーカーの保守部品の供給が終了が決定
☑ 修理部品の在庫がなくなると、不具合の発生時に修理できなくなるリスクが発生する。
☑ 修理部品がなくなるとメンテナンス契約の継続が困難になる。

 当社のこれまでの経験から、リニューアル工事は発注後、すぐに工事を開始することは困難です。工事内容にもよりますが、発注から工事開始まで最短で6ヶ月かかり、工期は約10日要します。

こうした着工までの期間や工期を見誤り、トラブルが発生してしまった場合、修理ができず、長期間エレベーターを停止せざるを得ないリスクも考えられます。

 そのため、今回の提案タイミングとその根拠は適切であると判断でき、オーナーさまに説明、本格的にリニューアル工事の検討を行うことになりました。

リニューアル工事の検討開始

 建物ごとにエレベーターの設置環境は異なります。

必要な資材や使用する重機に違いがあるため工事内容が変わります。さらに、工事会社によっても施工機器などの違いがあることから、比較検討は非常に重要です。

 そのため、当物件においても、複数の業者に提案を依頼し、「工事内容」「金額」「工期」について比較検討することが不可欠であると判断し、当社からリニューアル工事に実績のある業者を選定し、現地調査と提案準備の依頼をだしました。

2社の比較検討内容

 2社から工事提案書と見積書を受け取り、発注に至るまでの検討過程を見ていきます。

☑リニューアル工事金額での比較

 まず2社の見積金額の大きな差は、工事内容の大きな違いが反映されています。

 ■A社:1,300万円(税別)

 巻上モーターや制御盤などの制御系部品に加え、意匠※やその他部品等の全てを交換するフ ルリニューアル提案。

 ※意匠とは、エレベーターのかご内を壁や照明などのデザインを変更すること。

   ■B社:600万円(税別)

巻上モーターや制御盤などの制御系部品を中心に交換し、再利用できる部品はそのまま利用する制御リニューアル提案。

 意匠工事が含まれたA社見積りとB社見積を単純に比較することは難しいことから、A社の見積から意匠工事を除外し、工事単価、人工単価、諸経費に分解して比較してみたところ、分解後の金額でも、B社の見積の方が安価であることがわかりました。

 

☑工事内容の比較

 これまで提出されてきたエレベーターの定期点検の結果報告書には「緊急性はないが、耐用年数を超えている部品の交換を推奨」との記載があり、今回の両社からの工事提案内容の施工にその交換推奨部品の施工が含まれるのかの確認を実施。

両社共にその点はクリアしており、どちらの会社に依頼しても、この部品交換は行われることを事前確認をしました。

 その上で工事内容のキーポイントは、意匠工事の必要性です。

意匠工事により、かご内のデザインが向上することで、入居者も喜んでいただけるとは考えられますが、今回は以下の理由から意匠工事は見送ることにしました。

 1.意匠の変更が、賃料収入の向上に繋がる可能性が低い。

 2.意匠の変更は、必ずしもリニューアル工事と同時に行う必要はなく、大規模修繕工事の際に検討することもできます。

☑工期の比較

 A社の工期は意匠工事を含め10日間、B社は8日間ですが、今回は意匠工事を行わないと判断したため、両社の施工日数に違いはありませんでした。

特にエレベータの工事では、エレベーター停止期間中、入居者には階段の利用を強いることになります。高齢者が多いマンションや高階層のマンションなどではこの工期にも注意が必要になります。

☑オーナーさまの懸念

 オーナーさまからは、工事金額、工事内容共にB社の方が良いように見えるが、リニューアル工事後、部品交換がその都度発生し、結果的にB社の方がコスト高になる可能性について懸念が示されました。

 B社からは、工事後のメンテナンス契約でその懸念を払拭できるという提案がありました。

A社が提出しているPOG契約のメンテナンスコストよりも、B社のフルメンテ(FM)契約は金額が抑えられるため、B社とFM契約をすれば、懸念されている工事後の部品交換負担を軽減できる可能性から、今回のリニューアル工事はB社に発注することが決定されました。

※POG契約とは
「Parts” “Oil” “Grease”」の頭文字をとったもので、故障や劣化した部品の交換・修理などは保守料に含まれず、別途費用が必要となります。その分保守料は低価格です。

※フルメンテナンス(FM)契約とは
消耗品の交換・補充だけでなく、故障や劣化した部品の交換や修理も、月々の保守料に含まれます。その分保守料は高額となります。

さいごに

 エレベーターのリニューアル工事は、工事期間中に一定期間エレベーターを停止させることになります。入居者に事前に工事の告知を行い、利用上の不便への対処、不満へのフォロー対応も欠かせません。

さらに、空室募集をする際には、「エレベーターリニューアル予定である」ことを募集資料に掲載することで、部屋探しをする方に対して「建物設備が更新される」というポジティブな要素をアピールすることができます。

また「契約開始後に一定期間エレベーターが利用できない」ことを事前に理解をいただくことで、「予想外のエレベーターの利用停止」による問題トラブルの未然防止にもなります。

このように、エレベーター関連の工事には、細やかな配慮が不可欠です。

比較検討を行うことで、適切なメンテナンス会社を見つけていただければと思います。

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