ゴミ不法投棄、二つの課題
ゴミ収集業者と契約しているにもかかわらず、当物件のゴミ置場には慢性的な課題がある状態です。その課題は次の2つになります。
1.粗大ゴミの不法投棄が日常的に繰り返される。
2.テナントのゴミ出しマナーが悪く回収されないゴミが発生。
その結果、ゴミ置場は、粗大ゴミと回収されないゴミが溜り、荒れた状態が続きます。
こうなると毎週のように未回収ごみの整理に動く必要があります。それだけならまだしも、粗大ごみはそのまま放置しておくわけにもいかず、オーナーさまがその処分費用を負担することになります。
各テナントに対しゴミ出しルールの周知活動を繰り返すも、一向に改善される様子なく、根本的に改善の必要があると判断、対策を検討することとなりました。
2つの是正対策
このようなルール無視を含むゴミの不法投棄是正対策には2つの対策があります。
1.物理的に捨てさせない対策
2.心理的に捨てさせない対策
まず1、物理的に捨てさせない対策とは、捨てるスペースやタイミングを無くしてしまう対策になります。例えば、ゴミ置場に鍵付きの扉をつけて捨てるタイミングをコントロールすることや、ゴミ捨ての時間を制限することなどの対策になります。
もう一つの2、心理的な対策は抑止力を利用します。防犯カメラの設置案がその代表です。カメラを設置して捨てた犯人を見つけ出すというより、監視されているので「捨てたらまずい」と思わせる対策になります。

防犯カメラの設置案の検討
まず、防犯カメラの設置で改善を検討してみます。
見られていることを意識させれば、ルール無視のゴミ捨てはしなくなると考える抑止力に期待する案です。
もちろん粗大ゴミの不法投棄者と、ルールを守らないテナントがいればそれを発見することができるので、防犯カメラでの監視体制の検討です。
想定されるコストは、防犯カメラ1台とレコーダーの設置工事でおよそ15万円。
この防犯カメラ設置案の懸念は3つ
①収益に繋がらないコストであること。
②改善効果の不透明性。
③ゴミ置場だけの撮影のため防犯性は上がらない。
導入する上で検討が必要な項目になります。
ゴミ置場のスペース縮小案の検討
実は、当物件のゴミ置場には致命的な問題がありました。現場に行くとわかるのですが、ゴミ置場が必要以上に大きいのです。
「大は小を兼ねる」とはいかないのがゴミ置場です。ゴミ置場が小さいと一定量のゴミが捨てられないということで問題になりますが、逆に大き過ぎることで日常的に捨てててもゴミ置場が一杯にならないので、ルールを守らない非日常的な捨て方をしても包含されてしまい、心理的に捨てやすくなるということに繋がります。ゴミ置場は小さすぎず、大きすぎずの適正がいいわけです。
この観点から、ゴミ置場のスペースを小さくする案の検討が上がります。ここには2つの効果が期待できます。
①粗大ゴミや未回収ゴミを捨てるスペースがなくなることで、物理的に不法投棄を減らすことになる。
②ルールを守らず捨てると、きちんと捨てているテナントが捨てるスペースがなくなることが目視で確認できるので、心理的に捨てにくくなる。
物理面、心理面の両方からの対策案になります。

実施案の決定とその成果
オーナーさまへこの2つの提案を行い、期待したい効果性と実行のしやすさ、コスト面からゴミ置場の縮小案を採用いただきました。
まず、スペースを狭くするため、ごみ置場内に溜まっていた粗大ゴミと未回収のゴミを一斉撤去、空になったゴミ置場内を採寸し、木材で新たに壁を造作、スペースを縮小させます。コストは木材と軽作業なので30,000円以下での対応。防犯カメラの設備投資と比べ格段に割安な対策だと言えます。
縮小対策完了後、巡回を含めゴミ出し日、週明けのゴミ置場チェックを行ったところ、粗大ゴミ不法投棄がなくなるだけでなく、きちんとルールを遵守したゴミ出しが実行されるようにもなり期待通りの効果が表れました。
まとめ
問題が発生すれば、課題を明確にし、その解決策としてのアイデアを管理会社は出す必要があります。しかし、出されるアイデアや提案がお金のかかることばかりであれば、当然コスト高になります。
もちろん効果を望むならばコストをかける必要があるかもしれませんが、こうしたオーナーさまの立場で考え、できるだけコストをかけず効果がある施策の提案は、収益向上、キャッシュフロー向上の為には不可欠になります。
今回の事例のようにコストをかけなくても対応できることや、他の対策でやれることがあるかどうかを検討し、アイデアをだせるかどうかを管理会社は問われていると思います。
出されるアイデアや提案内容が通り一辺倒であったり、コストがかかるものばかリである場合、それ以外の提案ができないかを担当者に要望してみてください。もし面倒くさがったり、「考えます」と言うものの新たな提案が上がってこない場合、管理会社としての力量に問題があるかもしれません。