コスト削減対策の検討
当物件は、大小様々、広さの違うタイプの部屋があるオフィスビル。今回エアコンが故障していると連絡があったのは、20㎡ほどのスモールオフィスでした。
現地でエアコンの状況確認したところ、部屋の広さとは不釣り合いな「天カセエアコン」がついています。オーナーさまに確認するも建築当初からの設備のようで、広さの割に容量の大きいエアコンがついている理由まではわかりません。
どちらにしても復旧が必要なので、設備業者を現地手配し確認してもらったところ、設置されている機種が既に廃盤のため、故障の原因である部品が調達できないことから修理対応ができず、エアコン本体の交換が必要との見解です。
ここで問題なのが、交換費用です。現状で設置されている同タイプの天カセエアコンへの交換となると高額になるのは間違いありません。
そもそも不釣り合いな容量のエアコンなので、20㎡に適した容量の小さいエアコンへの取替えでも問題なさそうですが、同じ天カセタイプであれば大幅なコスト削減にはなりません。
これが、広さに適した「ルームエアコン」への切り替えであれば、大幅なコスト削減が可能になります。
・天カセから天カセへの交換コスト:約40万円
・天カセからルームエアコンへの交換コスト:約10万円
当物件で「ルームエアコン」への切替えが可能かどうか検討してみる価値は十分ありそうです。

ルームエアコン切替えの3つの課題
一般に「天カセエアコン」から「ルームエアコン」に切り替える上で次の3つの課題をクリアする必要があります。
1.容量(部屋の広さ)が適切か
2.室外機の設置場所の確保
3.室外機の配管通す穴の確保
当物件でこの3つの課題を見てみると
1の容量は十分クリアしています。
2ルームエアコンには各一台につき室外機があり、室外機をおくスペースが必要です。この部屋にはベランダがあるので、室外機を置くことができます。
3エアコン本体の室内と室外機をつなぐ配管を通す穴が必要。
1,2共に課題クリアしていますが、最後の3は壁面に穴を開けるコア抜きの工事が必要になります。建築上可能であるかどうかの確認も必要です。これが可能であれば圧倒的なコスト減が可能となります。

切替えのもうひとつの課題
工事業者と共に図面と現場での確認を実施した結果、壁面のコア抜きが可能であるとの判断ができました。
これで3つの課題すべてがクリアできたわけですが、実はもうひとつクリアさせておきたい課題があります。それは、物理的に設置できるかどうかというのではなく、現テナントが退去した後、新たにテナント募集する際にルームエアコンへ変更してしまうことで募集戦力が低下してしまわないかという懸念です。
「天カセ」の需要が高いのであれば、募集賃料等を下げなければならなくなるなど収益上に影響がでてくるので、この課題もクリアしておく必要があるわけです。
これは、接客現場のテナント専門の仲介会社へのヒアリングで影響の度合いを確認することができます。
ヒアリングの結果、ほとんど影響がないことが確認できたところで、オーナーさまへ提案を実施しました。
切替えの実行とその成果
オーナーさまとしては、大幅なコスト削減になることと、賃料低下など資産価値への影響がないことまでが判断できたので、「ルームエアコン」への切替え提案を快く了承いただきました。
切替施工に向けてもうひとつ大事なのは、現テナント契約者への説明責任です。容量への影響がないのでエアコンの効きが悪くなるわけではないですが、契約時の設備とは違ってくるので、テナント契約者の了承を得る必要があります。
こうして、オーナーさま、テナント契約者の両方の了承が無事得られたので切替工事の施工が決定しました。
切替施工工事は、2.5KW型ルームエアコンの新設、壁のコア抜き開口工事、電源作成により113,000円(税別)での施工となります。
これが同タイプの天カセエアコン交換の場合、新品であればおよそ40万円前後のコストがかかることになりますから、30万弱のコスト減の成果となりました。
次のテナント入居の準備までの対策
こうした経年による天カセエアコンの故障は、当物件で今後増加してくることが予測できます。今回のルームエアコンへの切替施工は、同タイプの部屋の故障時にも応用できることから、今後同タイプ部屋の新規契約時の賃貸借契約書に「故障の際にはルームエアコンへの切替え」を行う旨を特約で付しておくことにしました。
契約開始時点ですでにテナントには、ルームエアコンへの切替の承諾が取れている状況なので、無用なトラブルの防止にもなり、大幅なコスト削減が継続可能になります。
まとめ:管理会社の役割
建物も室内設備も経年による不具合は当然に発生します。こうした経年を理由とした故障の場合、室内設備の故障では時期が重なることが多く、立て続けにコストが発生することは少なくありません。
こうした時期を迎えた物件に「故障したから交換」と単純に反応してしまうことは、収益力を落とすことにつながる可能性があるので注意が必要です。
収益の最大化を考える立場にある管理会社が、交換に代わる提案をだせるかどうかです。コスト削減を意識した提案ができるかどうか管理会社の力量が問われます。
オーナーさまにとってパートナーシップを元に運営してくれる管理会社であることが不動産経営の成功には欠かせない要件であると考えています。今、お付き合いの管理会社が、もしそうした役割を担えないようであれば、是非一度当社にご相談ください。