大阪市中央区・ミナミの主要駅徒歩5分に位置する、築44年の鉄筋コンクリート造マンション。
立地は十分な競争力がある一方、建築以来、一度も大規模な修繕が行われておらず、建物にはさまざまな劣化が現れていました。
外壁には大きなクラックが走り、共用階段のコンクリートは爆裂して鉄筋が露出。手すりの腐食に加え住戸では雨漏りも発生していました。
そして、建物の老朽化は安全面だけでなく、賃貸経営にも影響を及ぼしていました。
周辺の募集状況から、本来であれば40㎡・2DKで8.5万円程度の賃料が見込めるにもかかわらず、
実際には7.5〜7.7万円程度でなければ成約しにくい状態が続いていたのです。
「立地は良い。それでも建物の状態が、物件本来の評価を下げている。」
この状況を改善するために必要だったのは、単に建物をきれいにすることではありませんでした。
限られた予算の中で、「何を今直し、何を次回に回すのか」を見極めること。
建物診断をもとに改修の優先順位を整理し、安全性の確保と資産価値・収益性の回復を目指した大規模修繕がスタートしました。
課題|44年間の劣化が一気に表面化
築年数が経過していても、不具合が発生していなければ、大規模修繕の必要性を実感しにくいことがあります。
しかし、本物件では建物からいくつもの「サイン」が現れ始めていました。
外壁には多数のクラックが発生し、共用階段ではコンクリートの爆裂によって鉄筋が露出。手すりにも著しい腐食が見られました。
さらに、2024年3月には共用部のブレーカーが経年劣化によって故障。6月には5階住戸で雨漏りが発生するなど、それまで潜在していた建物の老朽化が、具体的な不具合として表面化していました。
このまま対応を先送りすれば、劣化範囲が広がり、将来的な修繕費がさらに膨らむ可能性があります。何より、階段や手すりなどの劣化は入居者の安全にも関わります。
大規模修繕を検討すべきタイミングを迎えていることは明らかでした。
しかし、ここでもう一つ重大な課題がありました。
「必要な工事をすべて一度に実施すると、費用が大きくなりすぎる」
判断|「全部直す」ではなく、改修の優先順位を決める
築44年、かつ大規模修繕の実施履歴がない建物です。
劣化している箇所をすべて挙げ、そのすべてを一度に改修しようとすれば、工事費は数千万円規模になります。
オーナーさまからいただいたご相談も、
「必要な修繕であることは理解している。しかし、そこまでの資金を一度に投入することは難しい。限られた予算の中で、最も効果的な改修をしたい」というものでした。
そこで当社では、まず建物の状態を把握するための診断を実施。
工事項目を単純に「やる・やらない」で判断するのではなく、劣化状況とリスクを踏まえて優先順位を整理しました。
今回、優先して改修する箇所
- 雨水浸入や躯体劣化につながる外壁クラック
- 雨漏りリスクのあるベランダ防水
- 劣化した雨水管・排水管
- 爆裂が発生している共用階段
- 腐食が進行した手すり
共通しているのは、「放置することで被害が拡大する可能性がある」「入居者の安全や生活に影響する」という点です。
一方、建物内部の共用部美装など、現時点では安全性や建物性能への影響が比較的小さい工事については、次回の改修へ回しました。
すべてを一度に完成させるのではなく、建物を長期的に維持していくために、「今、投資すべきところに予算を集中させる」。
これが今回の改修計画の基本方針です。
改修①|まずは入居者の安全に関わる劣化を解消
特に優先度が高かったのが、毎日入居者が利用する共用階段と手すりです。
階段ではコンクリートの爆裂が進行し、一部では内部の鉄筋が露出していました。
爆裂箇所については劣化したコンクリートを撤去し、露出した鉄筋に防錆処理を行ったうえで補修。
さらに階段には長尺シートを施工し、防滑性にも配慮した共用動線へと整えました。
腐食が進んでいた手すりについても交換し、必要な強度を確保しました。
築古マンションの改修というと、外観をきれいにすることに目が向きがちです。
しかし、住居は入居者が日々生活する場所です。
見た目の改善より先に、安全に暮らせる状態を取り戻す。
今回の工事では、この考え方を優先しました。
改修②|外壁と防水性能を回復し、劣化の進行を防ぐ
もう一つの重要な課題が、外壁全体に発生していたクラックです。
外壁のひび割れは見た目だけの問題ではありません。
クラックから雨水が浸入すると、内部の鉄筋が腐食し、膨張することでコンクリートの爆裂を引き起こすなど、建物そのものの劣化につながる可能性があります。
実際に本物件では、2024年6月に5階住戸で雨漏りが発生していました。
そこで建物全体の外壁を確認し、必要なクラック補修を実施。そのうえで外壁塗装を行い、建物の防水性能を回復させました。
併せてベランダ防水や雨水管・排水管についても改修。
「すでに起きている不具合を直す」だけでなく、「これ以上劣化を進行させない」ための予防保全として工事内容を組み立てました。
成果|安全性だけでなく、物件本来の賃料水準も回復
今回の改修によって、まず大きく改善したのが建物の安全性です。
爆裂していた共用階段や腐食した手すりを補修・交換し、外壁や防水についても必要な対策を実施。
入居者が安心して暮らせる建物としての基本性能を整えることができました。
さらに、外壁のクラックが補修され、建物全体が塗装されたことで、外観の印象も大きく改善しました。
そして、その変化は賃貸経営にも表れました。
改修前は、40㎡・2DKの住戸が7.5〜7.7万円程度でなければ成約しにくい状況でした。
改修後には、8.5万円での成約を実現。
駅徒歩約5分という本来の立地競争力を活かせる賃料水準へと回復しました。
今回の成果は、単純に「建物をきれいにしたから賃料が上がった」と捉えるものではありません。
建物状態によって生じていたマイナス要因を取り除くことで、物件が本来持っていた競争力を発揮できる状態へ戻したことに、大きな意味があります。
築古マンションの大規模修繕で重要なのは「何を、いつやるか」
築44年という年月を経た建物を、一度の工事ですべて新しくすることは現実的ではありません。
だからこそ重要なのは、
「全部やるか、何もしないか」ではなく、「今、何を優先してやるべきか」を判断することです。
今回の事例では、建物診断をもとに、安全性・劣化進行・雨漏りなどのリスクが高い箇所を優先。
美観を中心とする工事は次回へ回すことで、オーナーさまの予算負担を抑えながら、必要性の高い改修を実施しました。
その結果、
- 入居者の安全性の向上
- 建物劣化の進行抑制
- 外観・物件評価の改善
- 賃料水準の回復
につなげることができました。
大規模修繕は、単なる「古くなった建物を直す工事」ではありません。
どこに予算を投じるかによって、その後の建物の維持管理だけでなく、賃貸経営の収益性にも影響する重要な投資判断です。
築年数が経過した物件ほど、まず建物の状態を把握し、修繕の優先順位を整理することから始めることが重要です。
築古マンションの大規模修繕・改修をご検討のオーナーさまへ
- 「大規模修繕が必要なのは分かっているが、どこまで実施すべきか分からない」
- 「見積金額が大きく、本当にすべての工事が今必要なのか判断できない」
- 「限られた予算の中で、効果の高い改修から進めたい」
建物によって、劣化状況も、優先すべき工事も異なります。
当社では建物の状態だけでなく、今後の保有方針や賃貸経営への効果も踏まえ、
「今やるべき工事」と「次回に回せる工事」を整理した改修計画をご提案しています。
大規模修繕を「一度にすべて行う工事」と考えるのではなく、長期的な賃貸経営の中で、何を・いつ実施するのが最適なのか。
築古マンションの修繕計画にお悩みの際は、ぜひ一度ご相談ください。
