これまで、ファミリー向け賃貸物件では、このような考え方が一般的でした。
しかし近年、入居者の設備に対するニーズは変化しています。ファミリー層の部屋探しにおいても、エアコンの有無が物件選びを左右する重要な条件になってきました。
特に2LDK・3LDKなどでは、引っ越しに伴って複数台のエアコンを購入・設置するとなれば、入居者の負担は決して小さくありません。
だからこそ、これからのファミリー物件では「エアコンを付けるか、付けないか」だけではなく、入居者にとってエアコンを使いやすい環境をどう整えるかという視点が重要です。
今回は、ファミリー物件におけるエアコン設備について、空室対策の視点から考えてみます。
エアコンの新設だけでなく、維持管理・更新時期・2027年問題まで含めた賃貸経営におけるエアコン設備全体の考え方は、こちらの記事で詳しく解説しています。
エアコンは「あれば便利」から「ないと選ばれにくい」設備へ
毎年、全国賃貸住宅新聞社が発表する「この設備がなければ入居が決まらないTOP10」では、エアコンが単身者向け・ファミリー向けともに毎年、連続で1位となっています。
単身者向け物件では、エアコンはすでに「付いていて当たり前」といえる設備です。
一方、ファミリー物件では部屋数が多く、すべての居室にエアコンを設置するとオーナーさまの負担も大きくなるため、未設置のまま募集されている物件も少なくありません。
しかし、入居者側から見ると事情は異なります。
物件を借りたあとに複数台のエアコンを購入し、さらに設置工事まで行わなければならない物件と、すでにエアコンが設置されている物件。
同じような立地・間取り・賃料であれば、入居時の負担が少ない物件が選ばれる理由の一つになることは十分に考えられます。
ファミリー物件にエアコンを設置する3つのメリット
① 競合物件との差別化_エアコン完備で、選ばれやすい物件へ
ファミリー物件では、エアコンが設置されていない物件もまだ多くあります。
そのため、「エアコン完備」「リビングエアコン付き」「各居室エアコン設置済み」といった条件は、周辺の競合物件と比較された際の分かりやすい差別化要素になります。
競合物件の設備状況や募集条件によっては、成約率だけでなく、賃料設定を見直す材料になるケースもあります。
② 検索で見つけてもらいやすい_ 検索に残ることで、内覧のチャンスを増やす
現在の部屋探しでは、入居希望者がまずポータルサイトで希望条件を設定し、候補となる物件を絞り込むことが一般的です。
その際、「エアコン付き」にチェックを入れて検索すれば、条件を満たさない物件は検索結果に表示されません。
つまり、物件の立地や間取りが魅力的であっても、検索段階で候補から外れてしまえば、比較・内覧してもらうところまで進めない可能性があります。
エアコンを設置することは、設備を充実させるだけでなく、入居希望者との最初の接点を増やすという意味でも空室対策になります。
③ 入居時の負担を軽減できる_初期費用を抑え、入居の決断を後押しする
ファミリー層の引っ越しでは、敷金・礼金や引っ越し代に加え、家具・家電などさまざまな費用が発生します。
さらにエアコンが設置されていなければ、本体購入費と設置工事費も必要になります。複数の居室に設置するとなれば、その負担はさらに大きくなります。
特に、小さなお子さまや高齢のご家族がいる世帯では、複数の部屋でエアコンを使用したいというニーズも考えられます。
あらかじめ1台でもエアコンが設置されていれば、入居時の負担を軽減できます。
「入居してすぐ快適に暮らせる」ことも、入居者にとっては大切な物件価値の一つです。
すべての部屋にエアコンを付ける必要はありません
ここでオーナーさまにとって問題となるのが、導入コストです。
2LDKや3LDKの場合、すべての居室にエアコンを設置すれば3~4台が必要になることもあります。
空室対策として効果が期待できても、設備投資額が大きくなりすぎれば、費用対効果の面から必ずしも最適とはいえません。
そこで考えたいのが、
という方法です。
例えば、利用頻度の高いリビングにはエアコン本体を設置し、その他の洋室については、入居者が必要に応じてエアコンを取り付けられる環境だけを整備しておく方法があります。

「エアコンを設置できる部屋」にしておくことも空室対策
築年数の経過したファミリー物件では、「エアコンを購入すれば簡単に取り付けられる」とは限りません。
例えば、次のようなケースがあります。
- 配管用スリーブがない
エアコンの配管・配線・ドレンホースを屋外へ通す穴がなく、設置前にスリーブ工事が必要になります。
- エアコンを固定するための壁下地が不足している
壁の構造によっては、本体を安全に取り付けるための補強が必要になる場合があります。
- エアコン専用コンセントがない
専用回路が確保されていない場合、分電盤からの配線や専用コンセントの新設工事が必要になります。
- 室外機を設置する場所がない
バルコニーなどがない居室では、建物条件を確認したうえで室外機の設置方法を検討する必要があります。
こうした工事を入居後に入居者自身で手配しようとすると、「思っていたより工事が大掛かりだった」「希望する部屋に設置できなかった」といった問題につながる可能性があります。
そこで、原状回復工事などのタイミングに合わせて必要な付帯工事を行い、将来エアコンを設置できる環境をあらかじめ整えておくことも一つの方法です。
本体をすべてオーナーさま負担で設置しなくても、入居者が必要に応じて設置できる状態にしておけば、募集時にも一つのメリットとして訴求できます。
大切なのは「何台付けるか」ではなく、物件に合った設備投資
エアコンを設置すれば、すべてのファミリー物件で空室が改善するわけではありません。
重要なのは、周辺の競合物件がどの程度エアコンを設置しているのか、入居ターゲットがどのような設備を求めているのか、そして投資した費用を賃料や稼働率によって回収できるのかを確認することです。
例えば、
- リビングのみ本体を設置する
- 主要な居室までエアコンを設置する
- 本体は設置せず、各居室を「エアコン設置可能」にする
など、物件によって適した方法は異なります。
設備投資は「付けた方が良さそうだから」という理由だけで行うのではなく、その物件が抱えている募集上の課題から逆算して判断することが大切です。
ファミリー物件の「当たり前」も変化しています
これまでファミリー物件では、「エアコンは入居者が用意するもの」という考え方が一般的でした。
しかし、入居者のニーズや部屋探しの方法が変われば、賃貸経営における設備の考え方も変えていく必要があります。
- エアコン本体を設置するのか。
- 一部の部屋だけ設置するのか。
- それとも、入居者が自由に設置できる環境を整えるのか。
大切なのは、「設置する・しない」の二択ではなく、その物件にとって最も費用対効果の高い方法を選ぶことです。
当社では、エリアマーケティングを通じて周辺の募集条件や競合物件の設備状況、仲介会社からの評価などを確認し、その物件の課題に応じた設備投資をご提案しています。
ファミリー物件の空室期間が長くなってきた、周辺物件との設備差が気になる、次回の原状回復工事に合わせて設備を見直したい――。
そのような場合は、エアコンも「選ばれる物件」をつくるための設備の一つとして、一度見直してみてはいかがでしょうか。
エアコン設備は「新しく設置するか」だけでなく、その後の維持管理や交換時期まで含めて考えることが重要です。
エアコンの設置・クリーニング・更新、2027年の省エネ基準への対応まで、賃貸経営におけるエアコン設備の考え方をまとめています。
