「選ばれる物件」に仕立てる
大規模修繕工事は高額なコストがかかるケースが多く、一度の大規模修繕工事で気になる箇所の全てに手を加えることが難しいケースがあります。
それゆえ、大規模修繕工事が完了した後、物件から受ける印象は「代わり映えしない」と仲介の営業マンから言われてしまうこともしばしば・・・。
当該物件も同様に大規模修繕自体は、当初の予定通りに外壁塗装や屋上防水工事など、施工箇所を絞って実施。
劣化部分の修繕がメインであるので、全体的に「古めかしい」イメージが払拭できずじまい。近隣には築年数・間取りの類似するマンションが多く、外壁塗装等だけでは差別化が図れず、常時3〜4部屋の空室が解消できずにいました。
いわゆる入居希望者に「選ばれる物件」になっていません。
そこで、これまで退去した室内リフォームにかけていた投資を見直し、以前の大規模修繕工事の際に施工できずにいた「選ばれる物件」にするための二つの提案を実施しました。
施工①エントランスのタイル貼替
まずは物件の顔ともいえるエントランスに着目。
外壁塗装を実施している為、壁そのものはキレイで清潔感がありましたが、全体的に古めかしい印象を拭えていません。
その原因は床タイルの汚れにあると判断できます。清掃やポリッシャー洗浄をしようにも、落としきれない汚れが残ることは明白で、中途半端は余計にくたびれた印象を与えてしまうことから、エントランス全面とエントランスまでの階段のタイルを汚れが目立ちにくい「グレーのタイル」へ貼替を決定。
全体的にシックな印象を与える配色で落ち着きをもたせた、廊下・エントランスの施工費用でおよそ70万円。
施工②共用廊下床のフロアタイル施工
エントランスと階段のタイルに続いて、共用廊下のフロアタイルの貼替を実施。
以前のタイルの配色は赤みがかり、築年数相応の古めかしい廊下という印象が強かったので、エントランス同様にグレーのフロアタイルにて貼替え、清潔感のある廊下としました。
3階建て27戸数の廊下・階段全面施工費用で、約90万円。
仲介営業マンの心理を理解する
仲介営業マンが入居希望者を連れて空室を案内することを想定し、部屋までの共用部がどういう状態なのかを確認することは、見落としがちですが非常に重要なポイントです。
入居希望者を成約に導く為には、室内リフォームだけではなく、その部屋に行くまでの導線の整備ができているかどうかが鍵です。
共用部に私物が置かれていたり、ゴミ庫が散らかっていたり、清掃が行き届いていない印象を与えてしまうと、成約率の低下を招いてしまいます。
これは仲介営業マンに対しても同じことが言え、案内時にエントランスや共用部が汚いイメージを持ってしまうと「もう案内したくない」の心理が働きます。汚い物件を案内することが恥ずかしくなるためです。こうなってしまうと物件の案内数は自ずと減少してしまいます。
いくら室内に投資したとしても、部屋に行くまでの導線上のエントランスや共用部が汚ければ、成約率だけでなく、案内数に大きなマイナスを与える事となり、結果的に成約数を下げることになります。
今回の共用部の改修後、仲介営業マンから「築年数を感じさせない物件に変わった」と評価いただき、案内数が増加、改修完了後60日以内に3部屋の成約という結果が表れました。

入居維持力にも有効
物件イメージを大きく変えることになるエントランス、共用部の改修には、低くないコストが発生しますが、大きくは二つの効果を期待できると考えられます。
お伝えしてきた通り、空室解消ができる「入居促進力」を高める効果と、もうひとつ、入居者に長く住んでいただける「入居維持力」への効果が高く、結果を出しやすい投資と言えます。
賃貸経営では、退去率をコントロールする事も重要です。せっかく入居を増やしても、退去が増えれば売上は上がりません。退去を抑止するためには、入居者に「長く住み続けたい」と選ばれることが必要です。
物件を清潔に保ち、時にリニューアルをして古めかしさを少しづつでも払拭していくことは、入居者に気持ちよく、長く入居し続けてもらうために欠かせない対策のひとつだと思います。
エントランスや共用部の保全の実施、状況によってリニューアルを実施することで入居促進と入居維持に効果的な投資となる時があります。一度、検討してみてはいかがでしょうか。