鳩害の影響は決して小さくない
鳩がベランダに飛来することで、こうしたトラブルが発生します。
・朝早くからの鳴き声。
・フン害、羽などで洗濯物が干せない(糞害、羽などの飛散)。
・フン害による健康被害とそのイメージ
ベランダ、バルコニーは入居者の専用使用権がある共用部なので、入居者の方が自身で鳩対策をすればいいと考えることもできます。
しかし、借りている入居者側からみると、鳩害でストレスが溜まり続けた挙句、相談するも「対策も費用負担も自分でして下さい。」となれば、退去を考えてもおかしくありません。立派な退去理由になります。
また、空室に内覧者が案内されても、ベランダの鳩害状況を見てしまうと、入居決定の選択肢から外される可能性は極端に高まり、空室解消の大きな妨げとなります。
最近では、鳩のフン害で起こる「健康被害」についてもよく知られた事実であり、部屋を貸す上でその対策は不可避であると判断、対策を実行することを決定しました。

鳩被害対策
鳩害対策では、鳩がベランダに飛来してからでは遅く、いたちごっこにしかなりません。鳩を飛来させない対策が必要になります。
第一弾対策:防鳥ワイヤー設置とハートジェル塗布
当マンションで、鳩がベランダ内で止まる場所は、手すりとエアコン室外機の上、住戸間のベランダパーテーションの3箇所になります。
手すりとパーテーションには「ワイヤー」を設置し対策。エアコン室外機には「鳩専用ジェル」を塗布し対策が完了。
しかし、その対策結果は残念なものに・・・
鳩がワイヤーをまたいで止まる・・・。ジェルの上にフンをしてしまうことでジェルが固まりジェルの効果が発揮されず、第一弾の対策はあっけなく失敗に終わりました。
・防鳥ワイヤー費用:約4,000円/戸×6室
・ハートジェル費用:約3,000円
合計 約27,000円
第二弾対策:鳩よけネットの施工
第二弾対策で、中途半端な対策では防げないと判断し、鳩対策の専門業者に相談。
専門業者との現場立会いの結果、解決には、ベランダ面に鳩が侵入しないように侵入防止のネットを全面施工する必要があると提案があり、オーナーさまと検討することに。
鳩よけネット施工によって数ある課題を全て解決できることに加え、当マンションでは、ネット施工時には屋上からロープを下ろした施工が可能で、足場費用分を抑えられることもプラス要素として捉え、ネット施工実施の決断がなされました。
・鳩よけネット施工費用:約400,000円(屋上からのロープ工法)

鳩よけネット施工の効果
鳩よけネット施工後、その効果はすぐに表れました。
定期的にあった入居者からの鳩害のクレームがなくなり、当然、鳩害が原因の退去も是正されました。
空室募集では、鳩よけネットを施工したことを募集資料に記載し、まず仲介営業マンの当物件に対する鳩害の悪いイメージの払拭に努めました。
大阪市内の都心に立地していることからも、そもそものマンション認知度は高く、成約に苦戦することは少なかったものの、最近は、鳩被害の為「せっかく綺麗にリフォームをしているのにベランダを見られると決まらない」という声が相次ぐ状況でした。仲介営業マンも、案内しても決め切れないので「案内しても意味がない」との心理が働き案内数を減少させていました。
鳩よけネットの施工の周知後は、「ベランダを見て断られることがなくなった」と評価もあがり、鳩害の影響から長期空室となっていた部屋にも成約が生まれました。

費用対効果の判定
入居維持では、鳩害クレームがなくなり、それが原因の退去がなくなりました。
退去があるとリフォーム代、次の募集にかかる広告料などコストが発生します。
少なく見積もって家賃の3ヶ月分、リフォーム状況にっては家賃の6ヶ月分に相当するコストを見込む必要があります。不動産経営にとって入居維持力が大切な理由です。今回、「鳩害」を理由とする退去を抑止した効果は大きいと考えられます。
入居促進では、鳩害が特にひどく、ベランダの清掃してもイタチごっこだった南面の4室が成約。長く空室だったことから収益性を回復する成果がでました。
1室およそ賃料5万円、4室なので1ヶ月20万円の利益を確保できたことで、ネット施工費の半分を回収することができました。
まとめ:鳩よけネット施工の決断
オーナーさまも鳩害に対してこれまで何もしてこなかったわけではありません。
第一弾の対策の失敗のように、対策するも失敗を繰り返されてきました。
しかし、当マンションの鳩害は、空室発生のリスクをはらむ大きな問題と捉える必要があるとの判断から、鳩よけネット施工の決断に至りました。
鳩よけネットの投資コストは決して小さいものではありません。幸いこのマンションは、部屋数、空室数が多くその効果は見えやすく、投資回収目処も立てやすいため、鳩よけネットの投資判断はそれほど難しくはないものでした。
しかし、これまで鳩よけネットの施工の決断がなされなかったのは、施工費用の妥当性を明らかにすることや、足場の要らない割安な施工方法を探し出すことなど、経営の観点から投資効果を考えた提案が、誰からもなかったことによります。
管理会社の役割は、まさにこうした提案を実施することにあると思います。
オーナーさまと同じ投資感覚から、投資すべきかどうかを共に考え、コストの妥当性を明らかにし、コスト削減を見越した提案が管理会社には求められます。
不動産経営を成功に導くには、こうした管理会社がパートナーとして存在する必要があると考えます。