リース契約検討の経緯
築18年ともなるとそろそろ室内設備に不具合がでてくる時期になります。
この単身マンションでも電気温水設備が、当月立て続けに2件故障し取替が必要になりました。しかもタイミングが悪く、退去が重なり最大5部屋空室の状況から募集戦略を駆使してやっと満室となり、オーナーさまが安定した賃料を得れるとほっとしたというまさにそんな時期でした。
・電気温水器の取替費用は一台30万円程かかり高額であること。
・電気温水器の耐用年数とマンションの築年数から、これから他号室でも次々に取替の可能性が高くなること
そう考えたオーナーさまに、リース契約での取替の選択肢があることをお伝えしました。
そもそもリース契約とは?
リースとよく混同されるのがレンタルです。リースもレンタルも所有権は貸し出す側にあるのは同じですが、リースはユーザーが必要とする設備や備品をリース会社が購入し一定のリース料で貸し出すのに対し、レンタルはレンタル会社が既に保有している資産をユーザーに貸し出すことになります。リース契約は新品を、レンタル契約は中古品を貸し出すのが一般的です。
リース契約での留意点には大きく3つあります。
①審査結果によっては契約が出来ないケースがある。
②リース契約期間中は原則的に中途解約が出来ない。何らかの事情で解約する場合は残存リース料金を一括で支払う必要がある。
③リース期間満了後も所有権はリース会社にある為、所有権はオーナー側に移転しない。
リース契約4つのメリット
①機器の取替に多額の資金が不要になる。
不動産経営においては、物件の設備機器を取替える際に多額の資金が必要になることがあります。特に一度の取替で30万円のコストがかかる電気温水器は故障の時期が重なると毎月のように高額な出費を迫られてしまいます。
一般的に電気温水器の耐用年数は15年~20年で、築年数が15年に近づくと故障のリスクも増え、この時期ぐらいから資金の準備をしておく必要があります。
リース契約は一度に多額の購入資金が不要で、故障時の費用負担もなく毎月のリース料の支払いだけで済むため突発的な費用発生時にも対応が出来、資金を有効に活用することが出来ます。
②経費計上が可能
リースは借入ではありません。リース料金は全額経費計上が可能なため節税に繋がります。また、機器の減価償却計算、固定資産税の支払い等の煩雑な管理事務も不要になり管理事務を大幅に簡素化することが出来ます。
③動産総合保険が付保
火災や落雷により壊れてしまった際や、いたずら・盗難などの偶発的事故による損害については保険金の対象になります。万一の場合もスピーディーに対応ができ安心です。
④入居者満足に繋がる
リース契約の場合は原則、マンション一括での交換になる為入居者間の不公平感がゼロで、最新の電気温水器になるので、入居者満足にも繋がります。
また、電気温水器の場合、取替が必要となった場合、故障が多発する冬場になると即日の対応ができず取替までに時間を要してしまうケースが増えます。こうした場合、お湯が使えなかった期間の銭湯代の請求を入居者からされるなんてケースもあります。
更に2020年の民法改正により、給湯器など設備の故障により不便な生活を送ることになった場合、その間の賃料は当然に減額されるものと解釈されることになっています。減額請求できるという弱いものではなく、当然に減額です。こうした点からもリース契約で最新の電気温水器を導入しておくことによってトラブルを未然に防ぐことができることもメリットのひとつです。
実録:リース契約の金額面のメリット比較

①「リース契約」は毎月必ず44,836円の費用は必要になります。年間53.8万円,10年で538万円の計算ですが、先ほど紹介した4つのメリットがあります。
②取替を伴う故障が発生した際に「都度取替」を行うメリットは、結果的に最も費用が抑えられる点になります。耐用年数はあくまで目安であり、なかには30年間不具合なく稼働し続ける電気温水器もあります。しかし、短期間で複数台が故障した際は多額の資金が必要且つ、取替ではなく部品交換の際もその都度費用が発生します。その為、毎月の収支が安定しないというのがデメリットになります。基本的には①リース契約のメリットと相反することがデメリットになります。
③「一斉取替」は、対象の全部屋で一斉取替を行う為、工事費用も安く済み、全て交換した場合で比べると最も安くなる点がメリットとなります。上記の例の場合、リース契約は10年間の支払い金額がおよそ538万円であるのに対し、「一斉取替」は437万円と100万円安くなります。ただし、一度に高額な資金を準備することは現実的に難しい上に、他の突発的な費用発生時に対応することが出来なくなるリスクもあります。
マンション経営上、建物の老朽化に伴い中長期的に大規模修繕や外壁補修、エレベーターリニューアルなどの大きな改修工事を計画していく必要があります。こうした工事には高額の出費が伴う為、一斉取替ではなくリース契約にし、来る高額な工事に備えて準備資金として確保しておくほうが得策だと言う考えもあります。
リースが満了を迎えた後
リースは一般的に契約期間が10年、支払い回数は120回です。
10年のリース期間満了時には、基本的にはいずれかの方法を選択することになります。
①再リース契約(1年毎更新)
②リース契約をいちから締結し直す
③解約
ほとんどの方が①の再リースを選択されます。本例では再リース時は1年毎の契約更新となり、リース料金は1/12に安くなり、月額リース料1ヶ月分で1年間使用出来ます。
リース契約をいちから締結し直した場合は10年後に新しい電気温水器へと取替を行うことになります。耐用年数を考えても10年後に取替が必要な故障が多発することはほとんどない為、最も現実的でない選択肢といえます。
③の解約の場合、リース契約中の電気温水器は引き上げられ、リース会社に返却する必要があります。これも現実的ではない選択肢です。
なんらかの理由で①の再リースを選択しないことが想定される場合は、最初からリース契約を選択しないほうが得策だと思います。
さいごに
今回ご紹介した本事例の年数や価格などは、あくまで本事例のみのものである為、契約するリース会社や物件規模によって契約内容は様々になります。リース契約は電気温水器だけでなく、他の設備でも活用が可能です。ただ、リース契約を選択する場合の留意点や選択基準に大きな違いはなく、リース契約とその都度交換、一斉交換それぞれの金額面での違いを理解し、リース契約の4つのメリットから判断することができます。リース契約を活用するかどうかを判断する際には是非参考にしてみてください。