オーナーさまからの相談
築60年の戸建て住宅を購入されたオーナーさまからのご相談。
戸建て賃貸は供給量が少ないことから人気だと聞くので、リノベーションをして貸し出そうと考えているが、空室期間を短く、入居したら長く住んでもらえる・・・そんな企画を考えてほしい。とのご相談でした。
猫飼育賃貸の可能性
戸建て賃貸は供給量が少ないため、人気があるのは確かですが、古さや汚さが目につく場合、それを払拭するためのリフォーム、時にはリノベーションが必要になります。
しかし、ただただリフォームでキレイにするだけで、ご要望通りの「入居したら長く住んでもらえる」ようになるわけではありません。
その物件に、長く住む価値がなければなりません。今回はその住む価値に「猫を飼うため」というコンセプトを設定します。
猫飼育可能と謳う物件は希少です。しかも市場にある猫飼育可能物件のその多くは、場所が悪く物件も古いなど、住む価値が低いと判断される物件がどうしようもなく「猫飼育可能」と打ち出すにいたった物件になります。 今回のコンセプト設定は、そうした部屋付けに苦戦する物件の苦肉の策という設定ではなく、長期入居を確保できる「猫を飼うため」の物件として価値設定をすることにしました。

猫のための専用住居への挑戦
当物件の室内はかなり古く傷んでいるためリノベーションに近い大がかりなリフォームが必要です。リフォームに大きくコストをかけることになるので、長期入居の確保を考えるなら「猫飼育可能」ではなく、「猫を飼うための住居、猫のための専用住居」をコンセプトとし、より物件価値を尖らせる必要があると考えました。
猫を飼っている、または飼う予定の人しか入居できない物件としての募集となります。
犬を飼っている人、飼いたい人は入居できない企画になります。
◆猫のための専用住居のために必要な設備
・猫トイレの設置スペース
・猫の出入りドアの設置
・滑らない専用の床材
・壁クロスではなく耐久性の高いボード
・コンセント位置
・キャットウォーク設置
・爪とぎ設置
通常の室内とはあきらかに違う仕様となり、猫を飼う人以外メリットがない設備です。「猫のための専用住居」をコンセプトにすれば、それ以外はターゲットから外すことになります。そのターゲットのためだけの設備投資にもなりますから、ターゲット設定に間違いがあるとかけたコストが無駄になる可能性があります。

失敗しないターゲットの絞り方
コンセプトを持つことは、ターゲットを絞ることになります。
このターゲットを絞る時にオーナーさまが抱く最大の不安は、ターゲット以外を排除することにあるのではないかと思います。
こうした不安は、市場調査をきちんと行うことで解消します。
◆ターゲット設定における市場調査の効果
①エリア特性の把握によりターゲット層の年齢、需要を見極めることが出来る。
②価格優位性の判断。コスト判断は市場調査から。
③市場優位性の判断。ターゲット層が求めているものの把握。
市場調査で、まず確認したいのはターゲット設定が的確であるかどうか。コンセプトを決める際には必ず確認します。今回であれば、猫のための専用住居の市場優位性の確認です。大局で見ると猫のための専用住居は希少で価値がありますが、その地域で求められているかどうかは別の問題であり確認をしなければなりません。市場調査で局所的に価値がでるかどうか、どう評価されるのかを知ることが必要です。

募集後の成果
募集開始後すぐに「好きな人はとことん好きな物件」と仲介店舗営業マンから評価の声をいただきました。築年数の古さから、若い世代にはあまり良いイメージを持たれなかったが、猫専用物件にコンセプトを設定したことで、逆に弱みを強みに変える事に成功しています。
募集開始からおよそ30日で成約。20代の女性から申込をいただき入居が決定。通常の原状回復より10,000円の賃料アップにも成功しました。
コンセプトの深堀りで更に長期化
今回の市場調査で、更に長期入居を確保しようと考えるならば「多頭飼い」を認めるとその確率があがることがわかりました。「多頭飼い」できる物件は更に希少なので、一度入居すると、他に「多頭飼い」できる賃貸物件を見つけない限り転居できません。退去しにくい理由をいくつもっているかが長期入居を確保する上では重要です。
猫の平均寿命はおよそ15年。15年という時間を約束されるわけではないですが、猫が快適に暮らせる家であればあるほど、長期入居の確保の確率は上がります。更に多頭飼いであれば、退去しづらく入居期間が延びる可能性が高まります。
ただただ長期入居を願うのではなく、長期入居の可能性はコンセプト設定で高めることができます。
正しいコンセプト設定でターゲットを絞る事で選ばれる住居づくりにチャレンジしてみてください。