1.漏水被害発生
当社で管理させていただいている物件で、一階部分がテナント店舗や事務所として貸し出している物件は少なくありません。この事例の単身物件もそのひとつです。
その1階店舗を契約する飲食の移動販売事務所の従業員の方から受電。
事務所の内壁が水で濡れている跡がある。包装資材などを保管している棚や資材も濡れているという連絡です。
2.状況確認と応急処置
水道業者へ出動依頼をしつつ、すぐに現地に向かいます。上階点検を行ってみると、202号室共用廊下のPS内給水管からの漏水が確認できました。
2階共用廊下にも水がしみだしている状況です。PS内の給水管の劣化が原因で、その交換が必要なのがすぐわかりましたが手持ちの給水管ではサイズがあわず、すぐの修理対応ができません。応急で止水を行い、養生にて漏れでる水を共用廊下の排水口へ誘導する作業を行い、明日の本作業につなげます。
1階事務所のテナントさんには、漏水原因と今日実施した対策、明日以降の対応を丁寧に説明し、ひとまず了承いただいたのでこの日は撤収となりました。

3.修理施工実施と経過観察
翌日、給水配管交換工事を実施し完了。1階事務所のテナントさんには漏水箇所の修繕完了を報告し、経過観察を依頼します。その翌日に事務所内の漏水状況の確認をし完全止水で修理工事は完了します。
4.円満解決のための二つの対策
テナント、店舗などの水漏れの場合、室内改修や備品の補償だけではなく、営業補償という話になるケースがあります。時に要求される内容がエスカレートする場合もあり、想像以上に時間とコストがかかってしまうことがあります。
そうならないための対策は種々ありますが、予防になる二つの対策をお伝えします。
4-1.二次クレーム抑止対策
被害に遭われた一階テナントさんには復旧完了まで、不便をおかけすることになるわけですから、漏水原因と施工方法の説明を丁寧に行う必要があります。
濡れた壁紙、室内が乾き切らないうちは復旧作業にはいれません。カビの発生の原因となるためです。しかし早期復旧ができるよう工事業者の施工可能日を先に抑え、テナントさんの営業タイミングに合わせた作業を行えるよう準備します。
ここでのケアを怠ると二次クレームへと発展し事態の収拾に余計な時間とコストをかけることになるので注意が必要です。
早期の段取りと、どのように復旧するかを丁寧に説明することで、不満や二次クレームのトラブルがなく施工に着手することができます。こうした被害のあった方へのケアも、復旧早期化の段取りでは重要なことになります。

4-2.鑑定人派遣依頼の効用
修繕工事と同時に室内被害と事務所備品の被害状況の確認も急ぎます。
被害状況から火災保険の補償を受けることが想定できるので、被害の全容を把握し損害賠償請求内容を確認します。
保険会社への事故報告には被害状況の説明が欠かせないため、当社のような現場処理する会社が担当する方が間違いが起こりにくくなります。
オーナーさまに代理報告の承諾を取り保険会社への連絡を入れ、保険申請に必要な見積書の取得、提出、被害写真などの準備し、事故原因や被害状況の説明などを行います。
この時、鑑定人の派遣を保険会社に依頼をします。どうしても加害、被害の立場から話をすると双方感情的になってしまうものです。特に法人やテナントの場合、備品の仕入れ伝票などの開示依頼や、被害品リストの作成など面倒なことを依頼する必要があるため、第三者の立場からの発信だとスムーズになります。
また鑑定人から、保険の適応範囲をある程度示し説明してもらえるので、補償範囲を理解してもらいやすく、過度な請求の是正にも繋がります。
まとめ
今事例では、被害全容の把握から報告を適切に行うことで、備品の補償、室内の改装費用、その他の復旧も含めて、漏水で発生した損害の全てを火災保険で補償することができました。オーナーさまの負担ゼロでの解決です。
また、二次クレームへの対応、第三者である鑑定人の目線を視点を活用することで感情論に陥らず、双方納得できる交渉がスムーズに行われました。
被害にあわれた方への補償や敏速対応は当然です。しかし、行き過ぎた補償まで要求されても対応はできません。このバランスが大切です。
円満解決の対策の参考にしてみてください。