賃貸住宅において、今やエアコンは「あると喜ばれる設備」ではなく、入居者の暮らしを支える必須設備の一つとなっています。
そのエアコンをめぐり、オーナーさまにも知っておいていただきたいのが、エアコンの「2027年問題」です。
2027年度から家庭用エアコンの省エネ基準が引き上げられることで、今後は従来の低価格帯モデルを中心に商品構成や価格、供給環境が変化していく可能性があります。
特に複数戸を所有するオーナーさまにとっては、1台あたりの価格差だけではなく、「複数台の交換が重なった場合の修繕費」「故障時にすぐ交換できないリスク」まで考えておく必要があります。
今回は、エアコン2027年問題の概要と賃貸経営への影響、そして今からできる現実的な対策について解説します。
エアコン「2027年問題」とは?
エアコンの2027年問題とは、2027年度から家庭用エアコンに新しい省エネ基準が適用されることに伴い、エアコン市場に大きな変化が予想されていることを指します。
エアコンには、少ない電力でどれだけ効率よく冷暖房できるかを示す「APF(通年エネルギー消費効率)」という指標があります。
新しい省エネ基準では、従来よりも高い省エネ性能が求められるため、メーカー各社は基準を満たす製品への切り替えを進めることになります。
ここで賃貸経営上のポイントとなるのが、これまで賃貸住宅で採用しやすかった低価格帯のエアコンが、今後も同じ価格帯で調達できるとは限らないということです。
高効率化のための部材や技術が必要になれば、製品価格にも影響する可能性があります。
つまり2027年問題は、「省エネ性能が高くなる」という入居者側のメリットだけでなく、貸す側のオーナーにとっては設備更新コストや交換計画を見直すきっかけとなる制度変更でもあるのです。
賃貸経営への3つの影響
① エアコン交換費用が上昇する可能性
まず考えておきたいのが、設備更新費用への影響です。
新基準に対応するために製品の高効率化が進めば、従来の低価格帯モデルと比較して、本体価格が上昇する可能性があります。
1台だけであれば影響は限定的でも、10戸、20戸と複数の住戸を所有している場合は話が変わります。
築年数が近い住戸ではエアコンの設置時期も重なりやすく、数年の間に複数台の交換が集中すれば、修繕費が想定以上に膨らむ可能性があります。
そのため今後は、「壊れたら交換する」という考え方だけでなく、所有物件全体で更新時期と費用を把握することが重要になります。
② 駆け込み需要による工事混雑
もう一つ注意したいのが、基準切り替えを前にした交換需要の集中です。
旧基準製品から新基準製品への移行が進む過程では、価格や在庫状況によって交換需要が集中する可能性があります。
特にエアコン工事は夏場に依頼が集中します。
真夏に入居中のエアコンが故障し、
「すぐに交換してほしい」
となっても、希望する製品の在庫がない、工事業者の日程が取れない、といった状況になれば、復旧まで時間を要する可能性があります。
猛暑下ではエアコンを長期間使用できないことが入居者の生活に大きな影響を与えるため、単なる設備故障として考えることはできません。
故障してから手配するのではなく、故障する可能性が高い設備を事前に把握しておく。
これまで以上に、この「予防保全」の考え方が重要になります。
③ これまでの低価格帯モデルを選べなくなる可能性
賃貸住宅では、高機能な上位機種よりも、必要な冷暖房能力を備えた比較的シンプルなモデルが採用されることも少なくありません。
しかし、省エネ基準の引き上げによってメーカーの商品構成が変化すれば、これまで使用してきた価格帯・仕様の製品が同じように調達できなくなる可能性があります。
そのため、
「2027年になってから考える」のではなく、現在設置されているエアコンの状態を2026年中から把握しておくこと
が重要です。
対策は「一斉交換」ではなく、退去時の計画更新
では、2027年に備えて古いエアコンをすべて交換する必要があるのでしょうか。
当社では、必ずしも一斉交換が最適とは考えていません。
現実的な対策としておすすめしているのが、
「退去時を起点として、設置から10年以上経過したエアコンを順次交換する」という方法です。
エアコンには製品ごとに設計上の標準使用期間が設定されており、長期間使用した製品では故障リスクが高まるだけでなく、部品供給の状況によって修理が難しくなる場合もあります。
そこで退去が発生した際に、次のような流れを作ります。
STEP 01|退去発生
退去のタイミングを設備点検の機会に
↓
STEP 02|製造年・状態を確認
設置年数や汚れ、不具合の有無をチェック
↓
STEP 03|更新の必要性を判断
使用年数や状態を踏まえ、継続使用か交換かを判断
↓
STEP 04|原状回復工事と同時に交換
必要な住戸だけを計画的に更新
↓
STEP 05|次回募集から新しい設備として運用
設備状態を整え、安心して次の入居募集へ
「壊れてから交換」ではなく、「退去時に確認して必要なものから交換」へ。
一斉交換を避けながら、更新費用の平準化と突発的な故障リスクの軽減を図ります。

「壊れるまで使う」から「交換時期を管理する」へ
エアコン2027年問題で重要なのは、単に「エアコンが値上がりするかもしれない」と捉えることではありません。
これを機に、賃貸住宅の設備管理そのものを、
が重要です。
特に複数戸を所有する物件では、各住戸のエアコンについて、
- メーカー・型番
- 製造年、設置年
- 修理履歴
- 交換予定時期
などを把握しておけば、今後必要となる設備投資も予測しやすくなります。
これはエアコンだけではなく、給湯器や給水ポンプなど、賃貸経営を支えるさまざまな設備にも共通する考え方です。
▶ エアコン設備の管理を総合的に知りたい方へ
当社では、こうしたエアコン設備の管理について、設置・維持・更新の3つの視点から整理しています。エアコンの新設・クリーニング・計画更新を、物件の競争力と収益性の視点から解説しています。
まとめ|2027年問題は「今ある設備を把握する」ことから
エアコン2027年問題は、単なる省エネ制度の変更ではありません。
製品価格・供給環境・工事体制の変化によって、賃貸経営の修繕計画にも影響する可能性がある問題です。
だからといって、古いエアコンをすべて急いで交換する必要はありません。
まずは現在設置されているエアコンの年式と状態を把握し、退去時の原状回復工事を活用しながら、更新が必要な設備から順番に交換していく。
このような計画的な設備更新が、突発的な修繕費を抑え、入居者の快適な住環境を維持することにつながります。
エスタス管財では、物件ごとの設備状況や築年数、今後の修繕計画を踏まえ、「今交換すべき設備」と「まだ使用できる設備」を整理しながら、オーナーさまの賃貸経営に適した設備更新をご提案しています。
エアコンの設置年数が分からない、古い設備が多く今後の交換費用が心配というオーナーさまは、お気軽にご相談ください。
