今回の改正の背景
賃貸マンションや集合住宅向けのLPガス料金は、LPガス事業者が賃貸マンションにエアコンや給湯器を無償で設置する一方で、その費用を月々のガス料金に上乗せして入居者から回収するケースが問題視されています。
不動産会社や賃貸マンションのオーナーにとっては、費用を負担せずに設備を充実させることができるメリットがあり、一方、LPガス事業者には、入居者のガス契約を得ることができるため利点が生まれます。
しかし、これにより入居者からはガス料金の高騰につながるという苦情や取引の内容が不透明だという指摘があります。
昨年は国民生活センターや消費者センターに寄せられたLPガスにおける相談件数が2140件に上り、料金に関する問題が多く寄せられています。これを受けて経済産業省は、消費者が支払うLPガスの利用料金が不透明な状況を是正すると発表するに至ったわけです。

改正内容
今回改正されるのは二点。まず一つ目は、LPガス事業者が行う過大な営業行為を禁止するものです。この改正の背景には、LPガス事業者が競争力を高めるためにマンションオーナーに便宜を図る目的で、LPガスと関係のない設備を無償で提供する商慣行の広がりがあります。こうした設備をオーナーに無償で貸与することによってLPガスの導入契約を結ぶ営業行為が規制されることになります。

二点目の改正内容は、LPガス事業者が消費者に対して発行する利用料金の通知書に、料金内訳の記載を義務づけます。
LPガスの料金は、一般的にガスに関連する設備(例:ボンベやメーター)の「基本料金」と、使用量に応じて発生する「従量料金」で構成されています。
しかし、今回問題視されている賃貸マンション向けの料金では、LPガス事業に関係のないエアコンや給湯器などの設備設置費用が「基本料金」に上乗せされているケースが多く確認されています。今回の改正により、「基本料金」と「従量料金」に加え、LPガスの利用に関係する配管などの設備を指す「設備料金」の3つに料金を分けて提示することが義務化されます。
今回の規制対象はLPガス事業者となります。いずれも罰則規定が設けられ、従わない場合は登録を取り消されたり、罰金が科せられる可能性があります。
入居率への影響
仲介営業マンからの意見によれば、「LPガスの物件はガス料金が高く、入居希望者に断られることがある」という声を聞くことがあります。
当社管理物件のLPガス物件の多くでは、LPガス料金を事業者との価格交渉により都市ガスと同等の設定にしており、入居者が負担するガス料金に差がないように対策を施しています。
入居希望者の方には、このことを丁寧に説明し、ご理解をいただいていますが、時にはネット記事などで『LPガスの物件はやめておけ』という情報を鵜呑みにし、LPガス物件を最初から避けてしまう方もいます。現実的に『LPガスの物件は料金が高い』との認識が根強い印象があります。
今回の改正により、LPガス料金が適正化され、この認識が正される方向に進むと、LPガスへのマイナスイメージが払拭され、これまで避けられがちだったLPガス物件も選ばれやすくなることが予測されます。

今回の改正により、LPガス事業への規制が強化されることで、新築物件などへの営業行為が正されることになると思われますが、すでに無償貸与で設備導入された物件に対してどのように規制するかに課題が残ります。
また、今回の規制の対象はLPガス事業者に限られますが、入居者が不透明な利用料金によって一方的に不利にならないよう、オーナーや管理会社の立場でも法制度や実情について認識を持つことが是正の重要なポイントとなります。今回の改正が賃貸市場の健全かつ透明性のある取引が進められる一環となればいいと思います。