共同事業の理解と収支報告書の課題
当社の顧客であるオーナーさまから電話連絡が入ります。
知人の契約している管理会社が廃業するらしいので相談に乗ってあげて欲しいとの依頼です。
さっそく依頼先の方との打合せを行ったところ、今回の相談内容がはっきりと見えました。
お持ちの賃貸マンションには、所有者が2名いて、共同事業として経営をされています。
新しい管理会社を探すにあたり、「共同事業」であることが理解できる会社であるかどうかと、その対応が可能かどうかが重要であると考えられていたため、3つの現状から2つの潜在的な課題に対処し、解決する必要であることが明らかになりました。
3つの現状
☑ 専有部は、部屋ごとに所有者がいます。
☑ 駐車場・駐輪場の収入と建物点検費用の支出は、それぞれの持分割合で按分。
☑ 共用部で発生するトラブルや課題は、両所有者で協議して判断する。
2つの潜在的課題
☑ 収支報告書に関する課題
☑ 情報共有方法に関する課題
収支報告書の課題に取り組む
共同事業であることから、専有部の収支報告書と共用部の収入と支出を按分した収支報告書の提出が必要だと判断しました。当社では管理システムを活用し、収支報告書や送金における人為的なミスを最小限に抑える取り組みを実施しています。
今回、所有者ごとに収支報告書を区別する課題について、当社バックオフィスとシステム会社で協議を行いましたが、現行の管理システムでは対応できないことがわかりました。
収支報告書が区別できないと、所有者ごとの共用部収入と支出を判別することができません。この課題解決策として、管理システムに人的処理を加え、共用部用の収支報告書を作成する方法を検討しました。
人的処理を加えることにより、収支報告書の正確性が損なわれることは許されないので、資料の数式化など、ミス防止のための仕組みをプラス。ミスの発生が起こりえない仕組化により、期待通りの収支報告書の提出が可能と判断し、オーナーさまにご説明、提出をしました。
「迅速」「正確」な情報共有への課題
共同事業ゆえの大きな課題のひとつが、「判断の難しさ」です。
今回のケースでは、何かを決定しなければならない場合、両所有者の意見が出揃わないと判断できないケースが生まれます。
賃貸経営では、漏水事故など、緊急時には即座な判断が求められことがあります。
こうした状況では、迅速な「報告・連絡・相談」と「判断」が不可欠であり、これらが後手に回ることで被害の拡大につながる可能性があります。
共同事業や共有物件でよくみられるケースですが、所有者が揃わず判断できなかった結果、被害が拡大したという事態は珍しくありません。こうした万一の事態に備えて、共同事業でありながらもスピーディーな判断のため、常に両所有者のベクトルを合わせておく必要があると判断し、次の2つの対策を決定しました。
対策1:
両所有者が関係する連絡はグループチャットを活用し、いつでもどこでも状況を把握し、意見交換ができる状態を維持する。
対策2:
月に1度 関係者が集まり、顔を合わせた定例会を行う。
管理会社に求められる重要行動の要素の一つに「報告・連絡・相談」があります。
当社では、オーナーさまの不動産経営状態を数値化するために「ヘルススコア」を採用し、常に経営状態の異常値がないかチェックしています。このヘルススコアの重要チェック項目にも「報・連・相」があり、共同事業のケースでも同じく、迅速で適切な報連相を通して経営判断をしていただく必要があります。
そのために必要な対策改善策を検討した結果、先の2つの対策が必要であると判断しました。こうした共同事業に対する課題への当社のアプローチや考え方をご説明、安心と納得をいただき、当社にて管理受託をお受けすることとなりました。

収益に影響!募集条件と市場相場に乖離が!?
管理受託に向けた引継ぎの最中、1部屋の退去案件が発生してしまいました。
当社契約開始前の退去であり、通常なら現管理会社の対応範囲となりますが、前管理会社は廃業に向かっているため新たな対応を期待できない状況です。そのため、打ち合わせの結果、当社での募集を実施することとなりました。
これまでの募集条件を確認してみると、市場性を捉えた募集ではない点に気づいたことから、エリアマーケティングを実施、次の4つの状況が判明しました。
1:
物件の周知営業が不足していることから、近隣駅の仲介営業マンの物件認知度が低い状況。
2:
立地エリアでは、家賃(管理費込)で130,000円以上の分譲賃貸物件が多く、これよりも賃料が安い部屋が少ないことが判明。これまでの賃料設定より家賃と管理費を値上げしても入居希望者はいると判断し、5,000円値上げしての募集を提案。
3:
競合物件分析から、保証会社費用をオーナーさまが費用負担する必要がないと判断し変更を提案。
4:
2LDKの全ての部屋に設置しているエアコンについて、残置物の扱いに変更しても成約に支障がないことを確認。ただしLDKにあるエアコンのみ、隠ぺいされた配管がバルコニーに通ずる構造となるため、入居者の負担が大きくなることから、LDKのエアコンだけは設備として扱うことを提案。
エリアマーケティングに基づいた3つの募集条件を提案し、全て承諾いただきました。
募集を開始してからほぼ1週間で成約にいたり、収益向上と成約までのスピードにオーナーさまも大変喜んでいただきました。


まとめ
今回、現管理会社の廃業という珍しいケースでの、管理会社変更となりました。
これまで大きな問題もなく、長く安定感のある管理会社にお任せされていたので、いざ管理会社変更となると不安なことが多かったというオーナーさまにも、共同事業や共有の複雑さを理解し、隠れた課題を特定して対処していく過程で、当社の対応力に納得いただけたのではないかと思います。
近年は、管理会社とオーナーさまとのコミュニケーション手段も多様化し、「WEB会議」や「チャット活用」により、場所を選ばずに関係者が共通認識をもちながら業務を進めることが可能になっています。そんな便利な時代ですが、今回、当社が毎月1回 関係者が顔を合わせた定例会の開催を提案したのは、意図的に共に過ごす時間を持ち、オーナーさまのパートナーとしてベクトルを合わせ、一緒に考える機会を持つことが重要だと感じたからです。
関係性が築かれる時間とともに、オーナーさまと当社との協働が形成された段階で、WEB会議などより効率的な手法に移行する考えです。
不動産経営の成功、収益の最大化を達成するためには、共に考え、成果へ伴走し追求する管理会社を選ぶことが不可欠です。そうした管理会社は市場に多くは存在していません。そんな考え方や経営姿勢ををもつ管理会社のお話を一度聞いてみたいと思われたなら、ぜひ当社までお問い合わせくだい。